深刻化する新規就農者
農水省は、新規就農者の就農前後に年間最大150万円を交付する農業次世代人材投資事業(旧・青年就農給付金)で、支援対象を原則45歳未満から50歳未満に拡大する。親元就農する後継者が交付金を受けるには、農地の所有権を後継者に移す必要があったが、利用権の設定でも交付対象にする。いずれも2019年度から始める。新規就農の支援の間口を広げ、担い手の確保につなげるのが狙いだ。
日本農業新聞
何を示唆しているのか?
事業開始年齢引き上げは、率直に新規就農者不足を物語っている。これは、ある意味重要な指標であると思われる。なぜかというと、就農者が多い場合には給付年齢引き下げが検討されてもおかしくない。
しかし、今回は給付年齢引き上げに舵を切ったわけだ。これは、ひとえに新規就農者不足を示唆している。
どうして新規就農は少ないのか?
日本の食糧供給率は国益に直結する。自国で安定的な必要最低限の食糧確保が出来なければ日本自滅も考えられるからである。食は生きてく上で最も基本的な活動。しかし、この食を他国からの輸入に大きく依存することは国家存亡の危機に直結する可能性が高まる。
また、近年の国際情勢不安を鑑みても既成の事実であり農業は日本国にとって最も重要な基本戦略と言わざるを得ない。
食料輸入国から兵糧攻めに合えば一気に窮地に追い込まれ、他国からの提示条件に対し有無を言わさず一つ返事せざるを得ない状況に陥る。こうならないためにも食料の安定的な自給政策は欠かせない。
新規就農者がいなければ予算を削減すれば良いといったところの問題ではない。こうした政府の危機意識が給付年齢を上げる理由の一つと思われる。
ではなぜ新規就農者は少ないのか?
一言で言えば「儲からない。」からである。
わたし自身も農業を始めて10年になるが、稼ぐことが一番難しいと実感している。なぜかというと、多く作れば良いというものではないからである。
農産物の流通は相場で取引され豊作時の時は価格が安く、凶作の時は価格が安い。これは、市場原理に基づいた取引であるからである。
豊作時はくたびれ儲け。凶作時はくたびれ損であるという事実がある。すなわち需給バランスにより価格が大きく変動してしまうので売上を予測できないため、儲かるのか儲からないのかその日になってみないとわからない。農業が博打と言われる所以である。
稼ぐ仕組みを生み出す力
稼ぐ仕組みを分かり易く言うと「自ら価格を付ける。」ということが本質的に当を得ているのではないだろうか。
価格が安定していれば、計画生産が可能であり未来への投資もしやすい。生産一辺倒からの意識改革こそが農家に求められた大きな課題である。
給付金、補助金のたぐいは、あくまで農業生産を補助する側面の意味合いが強いが、実のところ重要なのは「自ら売る力」である。本来であれば売る力を伸ばすような側面に給付金や補助金を活用していただきたいとも考えている。
売る力を発揮することが元来農協の役目と思うのだが、当地区に限ってはイマイチ非力感を感じざるを得ない。協同選果・共同販売を行いスケールメリットを活かした販売価格交渉が可能となるところだが・・・。
わたしの知る限り稼ぐ力のある農家は、生産・物流・販売がしっかりと自己完結しているところが実に多い。
その実態は、安定供給と安定価格販売に他ならない。つまりは、相手の立場(小売・仲卸)になってどういう問題があるのかを理解しているか?である。
自分で作りたいものを作って売るのもいい。しかし、しかしだ。お客様のニーズを把握することも販売するためには重要な要件でもある。
市場調査を含めニーズを知ることは、従来型農業から脱却する糸口になるのではないかと思う。
農業は実に面白い!
「ピンチをチャンスに変える。」今まさに農業が直面する命題とも言えよう。就農者が少ないということは今後10年後、20年後に大きなチャンスがあると言うことでもある。
農業では稼げないのではなく、稼ぐ工夫をいまだ知らないだけなのである。有能な新規就農者が増えることは実に頼もしく感じる。
さあ、一緒になって明日の農業を創造していこうではありませんか!